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正しくデータを見るための思考法_情報に騙されないために知っておくべき因果推論

 こんにちは!技術者として仕事をしている現役理系サラリーマンのつぐっちゃんです。

 今回ご紹介するのは情報が溢れる今だからこそ知っておきたい、データを正しく見るための考え方となります。

 最近ではフェイクニュースやデマ情報など人を惑わす様な信ぴょう性の低い情報が問題になってきています。今一度データと冷静に向き合うことで、不安に煽られて損をしないよう気を引き締めて行くべきではないでしょうか。

 そこで本記事では次のことをお伝えすることを目的としています。

因果関係と相関関係の違いを明確にし、因果関係を見極めるための3つポイントを知る

 データに対する正しい見方を学べば、実は根拠のない情報に騙されることを減らせます。また情報から因果関係を見極めることができれば、良い結果を出すための効果的なアクションを取れるようになります。興味のある方はぜひ最後まで目を通してください!

参考図書

 本書は特に情報の信頼性や根拠が求められる教育界と医学それぞれのスペシャリストである著者達が、数多あるデータから因果関係を見出すエッセンスを解説した書籍です。

「「原因と結果」の経済学_データから真実を見抜く思考法」
 中室牧子/川津友介

因果関係と相関関係の違い

●因果関係:どちらかが原因でどちらかが結果である状態。A→B(AだからB)が常に成り立つ。
●相関関係:2つの事柄に関係があるもの、その2つは原因と結果の関係にない状態。A→Bが必ずしも成り立たない。

 最初に次のデータをご覧ください。学力と体力との関係をプロットした図になります。

引用元:https://dual.nikkei.com/article/030/33/

 このデータから読み取れることは何でしょうか。一見すると、算数の正答率が高いほど体力テストの評価も高くなるように見えますね。学力が高いから運動能力が高いのでしょうか。つまり、子供の体力を上げようと思ったらまずは子供に勉強させるべきなのでしょうか。

 もちろんそんなことはありませんよね。この様に2つのデータに関係がありそうでも、必ずしも因果関係とはならないケースは少なからずあります。

 ここで本書では、2つの事柄のうちどちらかが原因で、どちらかが結果である状態を「因果関係」がある。一方で、2つの事柄に関係があるものの、その2つは因果関係にないものを「相関関係」があると言います。引用元の記事には、各地域の裕福度が学力と体力双方に影響を及ぼしているのではないかと推察しています。

 本例を用いると、もし学力が高いという「原因」によって、体力テスト評価が高くなるという「結果」がもたらされたのであれば「因果関係」があると言え、そうでなければ「相関関係」があると言えます。勉強だけをすることによって足が速くなることは明らかに無いので、学力と体力には相関関係があると言えるでしょう。

データ解釈の必要性

 日常に目にするデータも必ずしも因果関係にあるとは言えない。騙されないためにもデータに疑いの目を向けることが必要。

 例示した学力と体力との関係性を指すデータを見て、体力向上のために勉強をさせようと思う方は少ないかと思います。しかしながら、仮にデータが横軸「年間の健康診断を受けた回数」、縦軸「平均寿命」だとして、例示した図の様な関係を示していたらいかがでしょうか。

 健康診断を受ける回数が多いほど平均寿命が長くなるというデータを見させられたら多少なりとも心を動かされませんか。この様に、よく分からないけれど納得してもおかしくないなと思えるデータって身の回りにありませんか

 私は広告宣伝において納得させるためのデータを出しているものを見かけます。「〇〇を1ヶ月飲み続けたら10kgのダイエットに成功」、「△△を使ったら90%の人が歩行能力が改善」など、特に健康を謳う製品に多いですよね。

 注意すべきなのは製品など何かをアピールするデータは、あくまで主張する側が用意したものであるということです。そのデータが間違いなく効果がある「因果関係」となっているのか冷静に見極めないと、時間やお金の無駄遣いとなってしまうかもしれません。

因果関係の見極め方「3つのチェックポイント」

関係のありそうなデータについて次の3項目を疑う。
1.「まったくの偶然」でないか
2.「第3の変数」は存在していないか
3.「逆の因果関係」は存在していないか

 本書では何か関係のありそうなデータに対して因果関係があるかどうか見分ける方法として「因果推論」という手法について解説しています。これは2つの事柄がそれぞれ原因と結果となるのか評価するもので、詳細な評価方法は割愛させていただきますが、とくに因果関係の具体的な証明の仕方に興味のある方はぜひ本書を手にとって見てください。

 さてここではその因果推論の導入部分と言える、因果関係となっているか確認するための3つのチェックポイントについてご紹介させていただきます。このチェックポイントを確認するだけで、大まかではありますが情報の関係性を見分けることができる様になります。

 ここで大切なのは情報を鵜呑みにするのではなく、一度疑って見て妥当性について考えて見ることです。今回ご紹介するチェックポイントはそのための基準として活用してみてください。

1.「まったくの偶然」でないか

 まずは2つの事柄の関係が「まったくの偶然にすぎないのではないか」と疑ってみることです。世の中には常識的に考えて関係しないであろう事柄の間にも関係がある様に見えることがある。本書にも「地球温暖化が進むと海賊が減る」であったり、「ジブリ作品がテレビ放映されるとアメリカの株価が下がる」など例示されています。

 これらの間に関係があるように見えるのはまったくの偶然であり、「見せかけの相関」と呼ばれています。

2.「第3の変数」は存在していないか

 2つ目は原因と結果の両方に影響を与える「第3の変数」の存在を疑うことです。見かけ上は因果関係と思わせて、実は第3の要因がそれぞれに影響を与えていただけというパターンになります。このケースでは原因と思われることだけをいくらやっても当然ながら結果はでてきません。

 上記にご紹介した学力と体力の例がこれにあたります。一見学力が上がるほど体力も向上するようなデータですが、引用元では第3の要因として裕福度がそれぞれに影響を及ぼしているのではないかと考察しています。裕福なほど子供に塾や運動教室に通わせることが多くなり、学力も体力も向上したということは実際にあり得そうですね。

 他に何が関係していそうか気づくのはなかなか難しいかもしれませんが、とりあえず気になったら別の情報源等から考えられる要因を探し、そのデータを突き合わせて見て本当に関係ありそうか考察してみると良いと思います。

3.「逆の因果関係」は存在していないか

 3つ目は原因と結果の方向が逆ではないかを疑うことです。2つの事柄の関係なので、原因と思っていたものが実は結果で、結果であると思っていたものが実は原因であったという状態です。

 本書の例では、警察官と犯罪の関係について記載されています。警察官の人数が多い地域では、犯罪の発生件数も多い傾向がある。これは警察官の人数が多いから犯罪が増えているのでしょうか。(警察官→犯罪)むしろ犯罪が多い危険な地域だから、多くの警察官を配置していると考えた方が合理的でしょう。

 この様に関係ありそうなデータについて、あえて逆方向に考えてみることで思わぬ見落としも防ぐことができます。

おわりに

 データを正しく見るための考え方について、いかがでしたでしょうか。近年ではインターネットを始めツイッターやYouTubeなど気軽に情報を入手できるコンテンツが充実してきたことから、普段から多くの情報と触れ合うことが多くなりました。それだけに、情報を見る側は今回ご紹介したように情報の信ぴょう性をこれまで以上にを疑っていくべきでしょう。

 一方で、情報を発信する側に立つ場合は情報の受け手が惑わされない様に配慮することが求めらると思います。そのためにもデータの妥当性はできるだけ見極めた上で発信していくべきでしょう。

 また信ぴょう性の高いデータを作れるようになると、上司や顧客への説得力も増し仕事に役立つと考えています。今回は因果推論の導入部分のみご紹介しましたが、どうやって因果関係を証明していけば良いのか、どういうデータがあればより信ぴょう性が増すのか本書には詳しく記載されています。ご興味のある方はぜひ手にとって見てください。

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